Voyage MuBox でミュージックサーバーを作る
ここでお話をするミュージックサーバーは、「iPhone/Androidで外から家にある音楽ファイルのサーバーにアクセスする」というものではなく、室内のオーディオ装置につないで楽しむミュージックサーバーをとり上げます。CuBoxは、ミュージックサーバーとしてよく利用されます。これがネット上で話題になっているだけでなく、実際にやってみたいという方も多いようです。では、デジタルオーディオの解説からはじめましょう。
アナログのソースをデジタル化する際にサンプリングする周波数や量子化ビット数等が低くく、かつ圧縮率が高いものを使うとデータ量は小さくなります。その分、再生時の音質は犠牲となるわけです。通常のCDレベルのものですとほぼ、「いい音」と判断されるでしょう。データで表示すると、44.1KHz/16bitです。携帯プレーヤーのデジタルオーディオでは、MP3やAACといった言葉で表現されているような、音源データの圧縮が用いられます。データ量が小さくてすむので処理装置も記憶装置も安くすむことと、著作権関連で、高音質のコピー制限意向もあるためです。室外でイヤホンを使って聴くのだからこれで十分ということもありますがそれが第一の理由ではないわけです。
それでも、iPodなどのデジタルオーディオでは、「実用上」は十分だとも言えます。アップルのAir Playなどは使って便利だし、ミドルロー・オーディオとの接続なら十分でしょう。32G/64Gのフラッシュがあれば、ミュージックサーバーとしても満足のいくものになっています。何よりもiTunesの使い勝手がとても良いです。
ハイエンドなデジタルオーディオでは、サンプリング周波数が高く、量子化ビット数の大きい(たとえば192KHz/24bitPCMなど)「ハイレゾ」データをミュージックサーバーをターゲットにします。ここではVoyage MuBoxを扱う機器をハイエンドコンポにつないでいい音を楽しむことを考えてみます。しかしながらハイエンドコンポの環境へPCをつなごうとすると悪者扱いされます。何故でしょうか? 今時は、オーディオのメインアンプやチューナなどでもデジタル回路が当然相当数使われており、高いクロックを使ったDSPをいくつも並列処理させているのが当たり前です。CDの録音時にフィルターでカットされた部分、サンプリング周波数や量子化ビット数の分解能がゆえに欠落した部分、これらを原音に近いものにデータを補完して戻す処理がなされます。デジタル回路でこうした信号処理をしている点ではPCが行っていることと何ら変わることはありません。違いは、これらのオーディオ機器では、デジタル処理からのノイズとなるもとを徹底的に押さえ込んで、最終的な目的である大事なアナログ出力には悪影響をあたえないように工夫していることです。ノイズの主たるものは電源系から回り込むものと電波輻射によるものがあります。PCでは、ある一定の基準(例えばFCCなど)の規制をクリアしていればそれでよく、これをそのまま同じAC電源タップを使ってオーディオ装置のそばで一緒に動作させると、それは大変な迷惑源と言わざるをえません。そしてそんなことを気にするのがハイエンドオーディオファンというものです。
さて、今回の本題。ミュージックサーバーというもので、まず何をしたいのかを整理しましょう。
iTunesを使ったことがあれば、その便利さ、快適さは忘れられません。iTunesほど便利でなくとも、ある程度いいUIで持っている全コレクションのライブラリを管理できて、簡単な操作で探し出して再生がしたい。何よりも納得のいく音質で聴けるようにしたいわけです。
ミュージックサーバーを使う環境を作ろうとしたら、
(1)高解像音源データを収納可能なストレージ
(2)データを管理、出力するサーバー機能
(3)データをエンコード(録音時)/デコード(再生時)する装置
(4)楽曲を選ぶUIをもつアプリソフト
(5)アンプ/スピーカー
が必要です。
(1)はハードディスクとかSSD・フラッシュメモリ(2)はサーバーのハード・ソフト、(3)のエンコードはPCで良く、デコードはDACということになります。(4)がiTunesやReal Playerなどと同じような音楽再生をヘルプするアプリ。
上記の理屈で言うと、PCなどはオーディオになるべく近づけたくない。(4)などはスマホやパッドでもできます。これらは、電源をつなぐことはしないのでノイズ源となりにくい。再生時にミュージックデータを出力してオーディオ機器であるDACへつないでしまえばハイエンドオーディオ的に許せます。そして、残る問題は(1)と(2)に絞られます。ここでCuBoxが登場ということになります。
何故CuBoxが良いのでしょう。まずサイズが小さい。消費電力も小さい。ということは通常のPCと比べてもノイズレベルが小さいことになります。そして輻射電波も小さい(それでも、CuBoxでは、底の部分のシールドが甘いので、オーディオ装置の真上に乗せないほうがよい)。その割には、高データレートの処理ができる。しかも、普通のLinuxなので、オープンソースですぐに使えるソフトがたくさんある。結果、操作もメンテナンスもしやすい。いざとなってもネットから色々なヒントが得られる。もし、あくまで電源にこだわる場合には、CuBoxの5V電源をバッテリーから給電するという手があります。スマホ用の充電電池も使えるでしょう。
そして最大の理由が、すでに先達が用意してくれたオープンソースがすぐに使えるということです。Voyage MuBoxというミュージックサーバーは、Voyage MPDのCuBoxへのポーティングしたバイナリとして提供されているものです。これだとWin PCよりは多少コツが必要とはいえ、インストールして設定をするだけで、比較的簡単に実現できます。CuBoxには、Optical Audioの出力があります。オーディオ機器への接続としてこれを使うというチョイスがあります。2013年10/22号の週刊アスキーに このことの「解説」の記事が掲載されています。(この記事を参照したい場合はpetapicoshop@petapico.bizまで問合せください)これだと、ハイエンドまではいかない肩の凝らないミドルクラスのオーディオとしても遊べるでしょう(Optical Cableの中には、形状の都合で、CuBoxに挿せないものもあります)。CuBoxには、リモコンに使う赤外の入力もあります。汎用リモコンをお持ちであれば、操作に使えるように試してみてはどうでしょう。リモコンについての情報はまだあまり見かけませんが、何かヒントが見つかりましたらこのコラムで紹介します。
ハイエンドオーディオならやはりDACが命だ、という方には、USBポートを介してDAC装置につなぐこととなります。(DACと言ってもだいたい5万円程度。ハイエンドオーディオの世界観からすると決して高価ではないでしょう。ちなみにCuBoxはProでも2万円しません。場合によってはオーディオケーブルのほうが高価です)検討ポイントは値段よりも、ドライバソフトになります。Linuxの世界では、音声の標準デバイスドライバとしてALSAとOSSの2種類があります。USBに挿してみて認識するかどうかで判断ができます。これの2つが使えるものであればいいのですが、そうでない場合にはちょっと一手間がかかります。間違っても先にWindowsドライバしかついてこないDACを安易に買ってきてはいけません。勘違いしてはいけないもう一つが、Ubuntuでサポートされていているという記事を信じてしまうことです。X86マシン上のLinuxで動いたからといって、ARM上のLinuxで動くとは限らないからです。まあ、これはオーディオだけではなく、全てのUSBドライバに当てはまることです。DACまわりは、例えばGaudioの記事「USB DAC研究」がとても参考になるでしょう。(http://www.pc-audio-fan.com/special/usb-dac-research/)
音にいろいろな問題解決のヒントは「みみず工房」さんのサイトも参考となります。(ここは説明が難しいのですが、「みみず工房」さんの"MPD on CuBox"は厳密にはMuBoxとは違うものとなります。)これらのブログサイトからヒントを受けた方の記事もまたたくさん見かけます。それもさらに参考になるでしょう。やってみて得られた情報はネット上で共有しましょう。
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