進化し続ける「ARMコンピュータ」は
スマホの次なる創造として小型コンピュータを送り出している
Raspberry Piに実際に使われているプロセッサのメーカーBroadcom には主力製品 Persona シリコンがあるが、Raspberry Piのはその系統ではありません。 Raspberry Piのプロセッサの話をする前にARMの話をすることにしましょう。
今ではすでに名前を知っている方も少ないかもしれませんが、ARMのルーツはエイコーン・コンピュータ(英: Acorn Computers)から始まります。エイコーンは1978年、イングランドのケンブリッジに設立されたコンピュータ企業です。1979年1月、最初の製品はエイコーン(どんぐり)という名称でした。その後、典型的な安価なホームコンピュータ Acorn Atom を経て、CPUは6502のままでシステムとしての拡張性を大幅に強化した Proton というマシンが完成しました。このマシンが BBC Computer Literacy Project と呼ばれるプロジェクトと結びつき 「BBC Micro」となった。BBC Microは1980年代から1990年代初期にかけてイギリスの教育コンピュータ市場を独占したことから、アメリカのアップルとよく比較されていました。
ソフィー・ウィルソンは命令セットを開発し、BBC Micro 上の BBC Basic でそのプロセッサのシミュレータを書き、この結果から自分の方向性が間違っていないことを確信しました。Acorn RISC Machine プロジェクトが公式にスタートしたのは1983年10月です。製造パートナーとしては、すでにエイコーンにROMやカスタムチップを提供していたVLSIテクノロジーが選ばれました。その後1985年4月26日、最初の「ARM1 」が完成しました。ARM1 はまず BBC Micro の追加プロセッサとして使われ、その上で周辺チップ(VIDC、IOC、MEMC)を開発するためのシミュレーションソフトウェアが実行されました。
アップルは同時期に全く新しい機器アップル・ニュートンを開発していました。プロセッサに対しては、電力消費量、コストパフォーマンスなどの様々な要求があり、クロックを任意の時点で停止可能なスタティック性も求められていました。アップルとエイコーンは共同でARM開発を開始し、この開発作業を別会社で行うこととなり ARM(ARM Ltd)が1990年11月に誕生します。エイコーンとアップルはARM社の株を保有し、VLSIテクノロジーは同社に投資すると同時にARMのライセンスを最初に受けました。
さてRaspberry Piの話をはじめましょう。 Raspberry Piは、コンピュータ科学教育の促進のために英国で開発されたLinuxベースで動作する超低価格で名刺サイズのパソコンです。このパソコンは小型でありながら、デスクトップPCと同様にグラフィックス処理機能を搭載し、基本的なインターフェースも装備されているため、ディスプレイやキーボードなどを接続することも可能となっています。
「こんなコンピュータを25ドルで実現できれば、子供達が自由な発想でプログラミングできるようになります」としてケンブリッジ大学のエベン・アプトンが最初に作ったプロトタイプと開発の狙いを、英BBCの著名なジャーナリストに話したことがきっかけとなり、Raspberry Piのメッセージが一躍注目されることになった。アプトンは、多くの学生にプログラミングの経験がほぼないことに危惧を抱いていました。ケンブリッジ大学を離れた後、アプトンはARMプロセッサベンダー(英ブロードコム社)でチップデザインのアーキテクトを務めた。その知見を生かして25ドルで実現できるボードを設計。資金を集め、メーカーに製造を委託し、Raspberry Piのライセンスで財団を運営するスキームを少人数のチームで作り上げました。
Raspberry Piは、エイコーン社・BBC Microの再来と目されました。Model A、Model Bという名称もBBC Microに由来しています。サポートされるコンピュータ言語の中にはBBC Microで利用されたBBC Basicも含まれ、ハードウェア的にもエイコーン社が開発したARMプロセッサを搭載しています。また、エイコーンのOSであるRISC OSも、Raspberry Pi用がRISC OS Open Limitedより公式リリースされています。
Raspberry Piの CPUプロセッサコアとしては700 MHzのARM1176JZF-S、GPUにVideoCore IV、256MBのDRAMを内蔵したBroadcom BCM2835 SoCを搭載しています。内蔵ハードディスクやソリッドステートドライブを搭載しない代わりに、SDメモリーカードを起動および保存用のストレージとしています。このボードは、OSにLinuxを使用して走らせることを意図している。Debianをカスタム化したRaspbian(英語版)の使用が推奨されていますがそのほかに、soft float版DebianとArch Linuxがサポートされています。推奨されている公式プログラミング言語はPythonですが、普通のLinuxなので、ARM Linuxで実行可能なものならほとんどの言語が利用できます。
SoC Broadcom BCM2835 (CPU, GPU, DSP, SDRAM)
CPU 700 MHz / ARM1176JZF-S コア (ARM11 ファミリ)
ラズベリーパイ財団は、カナダのセネカカレッジで開発されたFedora バージョンPidraをリリースし、プログラムをやりとりするためのアプリケーションストアを開設しています。現在はライセンスキーを買う仕組みになっています。
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