数年前から、「ものづくり」回帰という風潮にのって、アマチュアのモノ作りや"Makers"などがもてはやされるようになりました。イタリア発のArduinoに脚光があたり、イギリス発の教育的な観点から発生したRaspberry Piは、ARMアーキテクチャーで扱い易いこともあり、すっかりと人気者となった感があります。何より、マニュアル本の数が半端じゃない。同じようなのが何冊も、まるでエクセルの解説書のような状態です。そしてインテルからArduino互換をうたったGalileoが発表されて、アマチュアの工作はさらに面白くなりそうな予感です。
それでは、組込みマイコンの開発現場で使われているものではどうなっているでしょう。
家電製品などの組込みではコスト重視、車載などでは実績と信頼性重視などの傾向があります。長い時をかけて改良を重ねるやりかたですね。たいていはフットプリントがコンパクトな(メモリ消費量が少ない)RTOSを使い込んでいくわけです。次第にバグも枯れてきます。その一方、全く新しいものを作る場合では、開発の工程に時間をかけないですむ事が一番重要です。特にデバッグでは、トラブルがOSの問題なのかアプリの問題なのかを切り分けるのも大変です。かつて(と言ってもつい近年まで)は WindowsCEがよく使われていました。いかに Linuxがフリーのオープンソースで使えるとしても、開発者が100%責任をもって使わなくてはなりません。OSだけでも保証のあるものを使いたい、そんな訳で WindowsCEの時代は長く続いたのです。それががらっと様変わりしたのは、Androidを組込みにも使うようになってからです。Androidの当初は携帯電話、モバイル機器向けだったわけですが、組込み製品にも応用されるようになりました。むろんこの背景には、CPU性能の向上、メモリ容量の増加、ストレージや通信機能の発展があります。Androidを使うことで、開発者はアプリにより専念できるようになりました。Androidが広がるにつれ表示画面を持たない装置でもAndroidやLinuxを使うことの方が一般的になりました。
このように組込みマイコンの作法が変化してきたこの世界ですが、日本ではボードの設計開発から製造までを行うことが少なくなってきました。日本内で作業すると人件費もコストもかかりすぎるということで、全部台湾や中国、インドなどに発注するようになってきたのです。そんなことで、日本ではますますエンジニア不在の状態になりつつあります。空洞化と表現されているこのような事情は、先進国内では共通の課題となっています。しかしながら「エンジニア不在」ではいけないという危機感も共通にあります。そんな中からエンジニアを育てなくてはいけないというアイデアがラズベリー財団から出てきたのです。
コストのことだけなら、まだまだ日本で開発ができる方法があります。一から開発するのではなくすればいい。量産は外に任してもいい。そんな考え方を実現するのがセミカスタマイズと言ってもいい方法でプラグコンピュータを使う方法なのです。別のコラムでプラグコンピュータの歴史を紹介したことがあるのですが、初代のプラグコンピュータは、電源のACアダプタプラグのような形をしていて、「電源にさしたままで小型サーバー」にすることがコンセプトでした。世代を重ねていろいろなアプリケーションに特化した形、機能を持ったモデルが開発されました。ファイルサーバーやホームサーバーなどのアプリケーション系ばかりでなく、例えばサイネージの表示制御などにも応用されました。プラグコンピュータを土台にすればいいということです。
#PetapicoShopでは、最新世代機のD3プラグを解説書であるCookBookとセットでの販売を始めました。過去のプラグコンピュータのモデルをご要望の場合もメールでお問い合わせいただければ対応が可能です。
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